トマト 生理障害の治療
尻腐れ果を切ったところ
トマト栽培では、菌などが原因で起こる病気の他に、
生理障害と呼ばれるものが発生することがあります。
健全に育っていたはずなのに、
病気ではない異常が出たら、生理障害かもしれません。
トマト栽培で起こりやすい生理障害の種類と、
その原因と治療法をまとめました。
[トマト 生理障害の治療]
■尻腐れ果
尻腐れ果は、実のお尻の部分が茶色~黒色に変色し、
腐ったようになっていく症状が出ます。
トマト栽培がはじめたの方だけでなく、
何度も栽培しているという場合でも、症状が出ることがあります。
裏返してみると
・原因
一般的には、カルシウム不足によって起こるといわれていますが、
他にも原因があります。
尻腐れ果の発生は、確かにカルシウム不足によるものですが、
だからといってカルシウムを物理的に足せば良いわけではありません。
というのも、土中にカルシウム成分が十分に残っている場合であっても、
尻腐れ果が発生することがあるためです。
カルシウムは窒素と拮抗関係にあり、窒素が多い状態だと吸収されにくくなります。
窒素などの肥料過多の状態になると、草勢が強く出過ぎるため、異常茎が発生します。
こういった場合も、カルシウムがうまく吸収できていないため、
尻腐れ果が出ることが多いです。
また、窒素だけでなく、カリやマグネシウムといったミネラル分とも拮抗関係にあり、
吸収が阻害されます。
他にも、土壌水分のバランスが悪く、乾湿の差が大きいと、もともと吸収率の悪い
カルシウムをトマトの根が吸収することができず、尻腐れ果を出す原因となります。
・治療
尻腐れ果は、発生すると改善するまでに時間がかかるため、できれば予防に徹した方が
良い生理障害です。
窒素などの特定の肥料成分過多、アンバランスな土壌水分にならないようにします。
一時に肥料や水分を大量に与えるのではなく、少量をこまめに与えるようにすることで、
緩やかに肥料を効かせることができますし、土壌水分が大きく変わることも防げます。
また、根を広く深く張らせることも重要です。
根域を広くすることにより、地上の乾燥や過湿などの影響を受けにくくなります。
■芯腐れ果
芯腐れ果は、尻腐れ果の症状が見の内側で起こったようになります。
表面上は特に問題がないように見えますが、切ると中心が茶色~黒色に変色し、
他の正常な個所と比べると、異質な状態になります。
・原因
芯腐れ果の原因は、尻腐れ果とよく似ています。
ホウ素などの微量成分が欠乏することによって起こりやすくなるという点が、
尻腐れ果とは異なります。
実の肥大速度に栄養吸収が追い付かない時、芯腐れ果が多くなります。
草勢がやたらと強く、過繁茂になっていると症状が出やすいため、
肥料過多や灌水量が多すぎることも、原因の1つです。
丸くなるはずの実がやや扁平になってくるのも、芯腐れ果となるサインです。
・治療
草勢のバランスをとり、過繁茂にならないように注意します。
根張りを良くすることで、外からの影響を受けにくくすることができます。
また、土壌の肥料成分や水分のバランスを保ち、
過灌水や肥料過多にならないよう管理します。
■すじ腐れ果
すじ腐れ果は、実に黒や茶色、白などのすじが入る生理障害です。
他にも、表面がざらつく金すじと呼ばれる症状があり、
収穫後に果肉が柔らかくなります。
・原因
すじ腐れ果は、低温に当たりやすい栽培初期や、曇りなどの悪天候が続いた時、
湿度異常、株が疲れてくる栽培後半などに症状が出やすくなります。
地下にある根と、地上部の茎葉のバランスが悪くなるのも、すじ腐れ果を出す原因です。
ハウス栽培をしていると、ハウス内の風通しが悪くなり、
湿気がこもってしまい、湿度が高くなることがあります。
特に気温が低めの時期や、日照不足によって気温が上がりにくい時期は、
保温のためにハウスを閉め切りにするため、湿度が高くなります。
さらに土に含まれる湿気も高くなり、根が弱る原因となります。
また、栽培前半に草勢が強く、飛ばし過ぎた株は、
後半になって急激に衰えることがあります。
こういった、栽培期間を通した草勢のバランスの悪さも、
すじ腐れ果の発生を助長します。
・治療
ハウスの内の湿度を上げ過ぎないために、換気は必要不可欠です。
風通しが悪くなると湿気もこもりやすくなるので、換気しましょう。
ハウス内の温度を下げたくない気持ちがあっても、
ハウス内が湿気てビニールが曇ると、さらに日照不足にもなりかねません。
北側を大きく換気して除湿し、光を入れるようにすることで、
過湿や日照不足を解消できます。
草勢のバランスを保つために、灌水量や追肥量に注意しましょう。
特に、栽培後半は株に疲れが出やすい時期です。
追肥のタイミングを逃さず、肥培管理をきちんと行いましょう。
■葉枯れ症
葉枯れ症は、活動が盛んな若葉から症状が出ることが多い生理障害です。
葉の先から縁にかけて、脱水症状のように色が抜け、白くなっていきます。
・原因
曇や雨など、天気の悪い日が続いて日照不足気味になったり、
生育後半に入ってスタミナが切れてくると、
株の調子が悪くなって葉枯れ症が発生しやすくなります。
また、スタミナ切れなど弱っている時だけでなく、
養水分のバランスが崩れて異常茎が発生している時にも、葉枯れ症が出やすいです。
近年の研究によって、カリ欠乏が原因という結果も出ているようです。
・治療
養水分の管理をきちんと行い、草勢の強弱が出ないように育てます。
栽培後半にスタミナ切れと思われる草勢の弱りが出ても、
多量の肥料と水分を与えるのは禁物です。
急激に養水分を与えると、トマトがそれを受け入れられず、症状が悪化します。
栽培初期から、根が良く生育するように管理し、
外からの影響を受けにくくしておきましょう。
ハウス栽培で天候の悪い日が続く場合は、換気をしつつ暖房をかけて温度をあげます。
こうすることで、過湿を防ぎながらも温度が上がり、養水分の転流がうまくいきます。
■窓あき果
窓あき果は奇形果の1つで、名前の通り窓があいたような症状が出ます。
一見すると虫食いかのような丸い形をした穴や、
パックリと割れて中まで見えるような大きな穴まで、穴の形状や大小は様々です。
見た目も重視される農家ではもちろん、見た目がそれほど気にならない
家庭菜園であっても、食べる気になれないことも多いです。
・原因
窓あき果は、低温に当たることで発生が多くなります。
着果時に低温に当たるというよりは、花が形成される時の環境が低温だと、
良い花が形成できずに奇形になるようです。
また、過度な乾燥によっても、花が奇形となって窓あき症状が出やすくなります。
・治療
育苗期や定植直後の栽培初期は、花芽を形成する大事な時期でもあります。
この時期に過度な乾燥や低温に当てないよう、注意します。
乾湿の差があまり出ないように水管理を行い、
最低気温が12度以下にならないように温度管理も行います。
実にチャックのようなギザギザが入ります
■チャック果
名前の通り、実にチャックのようなギザギザとした線が入る症状です。
皮がひきつったようになり、その部分だけ硬くなり、食べる時の食感が悪くなります。
・原因
チャック果の原因も、窓あき果と似ています。
花を形成する時期に、高温や低温、強い乾燥に当たると、
良い花ができずに奇形となります。
また、花の質が悪くなるため、咲き終わった花弁の落ちも悪くなります。
これもまた、チャック果の原因だといわれています。
・治療
良い実をつけるには、良い花をつけることが重要です。
そして良い花をつけるためには、花芽を形成している時期に、不要なストレスを
かけないことです。
トマトが苦手とする低温はもちろん、高すぎる温度もストレスになり、
チャック果を増やします。
ハウスを利用しているかどうかに関わらず、
トマトが育ちやすい温度帯を保つようにしましょう。
また、トマトは乾燥に強いといっても、強い乾燥は禁物です。
適度に水を与え、過乾燥を防ぎましょう。
■空洞果
空洞果は、やや扁平になるものの、実は大きく育って大玉となるため、見た目は
特に問題がないように見えますが、切ってみると中に異変があります。
本来は水分をたっぷり含んだゼリー質が入っているはずが、
ゼリー質部分がなく、空洞になっています。
・原因
水やりが多すぎたために草勢が強くなってよく茂ったり、株間を狭くして植え付けた
ことによって、陰が多くなって日照不足になると、症状が出やすくなります。
反対に、草勢が弱い時にも、症状が出やすくなります。
この場合は、大玉にならず実は小さめで長く、
三角や四角といった角ばった形の空洞になります。
・治療
水やりや追肥の管理を徹底し、草勢のバランスを保つことが重要です。
過湿はもちろん、過乾燥も良くありません。
そして乾いたからといって、一度に大量の水を与えるのも、空洞果を助長しますし、
他の生理障害を発生させる原因にもなります。
あまり大玉にしようとせず、ほどよいサイズの締まった実を目指します。
家を少し留守にして水やりを怠ったら……
なんとも悲しい
もったいないですね
■裂果
裂果には、ヘタからお尻にかけて縦方向に割れるタイプと、ヘタを囲むように
割れるタイプがあります。
割れ方が異なると、原因も異なります。
・原因
ヘタからお尻にかけて縦方向に割れるのは、実の肥大スピードが早い場合や、
葉が小さく強い光が多く当たる場合に発生しやすくなります。
ヘタを囲むように割れる場合は、スタミナ不足などで株に疲れが出て、
老化している場合に多く見られます。
・治療
どちらのタイプの裂果が起きたとしても、程よい草勢を保つようにすることがカギです。
草勢が強くなれば縦に割れ、弱すぎるとヘタの周りが割れてきます。
また、株間を広くとりすぎている場合も、葉に当たる光の量が増えるので、
適度な株間をとるようにします。
トマトは品種によって、葉のサイズや形が少しずつ異なります。
育てるトマトに合わせた株間を考えましょう。
栽培する株数が少なく、光が当たる量を株間によって調整できない場合は、
寒冷紗や遮光ネットなどをうまく使い、柔らかい日差しにする工夫が必要です。
*詳しいトマトの栽培方法は、下記をご覧ください。
・トマト プランターの育て方
・トマト 地植えの育て方
・トマト わき芽かき・摘心の方法
・ミニトマト プランターの育て方
・ミニトマト 地植えの育て方
・ミニトマト わき芽かき