トマト 放任栽培
トマトの基本の栽培法といえば、わき芽を摘んで育てる一本仕立てです。
わき芽を数本を残して複数の枝に仕立てて育てる方法もあります。
けれど、最近は放任栽培(ソバージュ栽培)という栽培方法が注目されています。
放任栽培がどのような方法なのかをご紹介しましょう。
[トマト 放任栽培]
■放任栽培とは?
一般的な栽培法が、わき芽を摘んで整枝する栽培法であるなら、
放任栽培は名前の通り、わき芽を放任し育てる枝を限定しない栽培方法です。
枝数を限定しないことで、花房が必然的に多くなります。
花房が多くなれば、それだけ開花・着果する数も多くなるという利点があります。
また、摘芯やわき芽かきといった作業は、
トマトの根を生育するのを抑制することがあります。
放任栽培をすることで、根を地中深くまで伸ばすことができるため、
水やりの頻度を下げることができるのも魅力です。
放任栽培をしているトマトは、一見すると茎葉が繁茂しすぎのように見えますが、
よく茂った葉のおかげで、夏の強い日差しから実を守ることができます。
トマトが真夏の強い日差しを受けると、皮が厚く硬くなって食味が悪くなったり、
焼けや裂果の原因となることがあるのを、トマト自身の葉で防ぐのです。
ただ、放任栽培は、枝の生育は、トマト自身に任せる形となる上、
わき芽かきや摘果なども行わないため、実が不揃いになることがあります。
しかし、形がそろっていなければならないのは、販売目的で栽培する場合です。
家庭菜園であれば、味はともかく形や大きさにこだわる方は少ないでしょう。
最近は自然農法で育てられた野菜も人気が高いため、
不揃いであることに抵抗がない消費者も増えています。
そのため、農家の中にも、放任栽培で育てている方がいるようです。
放任栽培のトマト
■放任栽培での注意点
放任栽培では、わき芽摘みも摘果も、原則として行いません。
わき芽摘みや摘果といった作業がなくなるということは、
その作業に費やしていた時間や費用を節約できます。
ただ、1本仕立てに慣れている方にとっては、
放任栽培で育つトマトは自由すぎて、手に負えないことがあります。
放任栽培をする場合、いくつか気をつけておきたいことがあります。
・株間に注意
放任栽培をする時、どうしても1本仕立てよりもスペースが必要となります。
通常はわき芽を摘んで縦に長くなるように育てるところを、
わき芽を摘まずに育てるため、横に広がりやすいのです。
一般的なトマト栽培と同様の株間だと、隣との空間が狭くなってしまい株が詰まります。
株間が十分でないと、風通しが悪くなってしまい、病害虫の原因となります。
一般的な栽培法であれば、株間は30cm~40cmほどで十分ですが、
放任栽培の場合は、60cm以上あけておくようにしましょう。
・泥跳ね注意
放任栽培をしていると、枝数が増える分、葉の数も増えます。
また、ミニトマトだと、鈴なり状態になることもあるため、
下へ下へと垂れ下がる傾向があります。
トマトがかかりやすい病気の中には、泥跳ねで感染するものも多いため、
泥跳ねには十分な注意が必要です。
株元をマルチなどで覆い、泥跳ねを軽減させることはもちろん、
ある程度は下葉を取り除いて、風通しを良くするとともに、
泥が付着しないようにしておくことも大切です。
地這い状態で仕立てるなら、株元だけでなく、
枝が広がる全面にマルチをしておくのが安心でしょう。
・仕立て方
放任栽培の場合、仕立て方は2種類です。
支柱やネットを使い、上方に誘引していく方法と、
支柱などを何も使わず、地這い状態で伸ばす方法です。
どちらの方法でも構いませんが、どちらにも長所と短所があるので、
両方を理解した上で選ぶようにしましょう。
1. 支柱とネットを使う方法
キュウリを育てる時のように、支柱とネットを設置し、
そこに伸びた枝を誘引していく方法です。
全体的にネットに沿って広げるため、
地面の上に広がる範囲を狭めることができます。
実が大きくなると、ネットが重みに耐えられずに切れることがあるため、
やや斜めになるように誘引するのがポイントです。
また、2条で育てる時などは、
繁茂した時に内側についた実の収穫が困難になる場合があります。
人が中に入れるくらいの高さに支柱を組み、
そこにネットを張って外側に誘引すれば、中央に人が入れるスペースができます。
支柱の内側に人が入れるようになれば、
内側にできた実も収穫しやすくなるので試してみてください。
2. 地這いで育てる方法
地這い状態で育てると、本当に自然な状態で育てることができます。
ただ、どうしても広いスペースが必要となりますし、
地面と接地する部分には病気の感染がつきまといます。
広いスペースが確保できるのであれば、誘引の手間もなく、省力化につながります。
放任栽培に向いた品種で試してください
・放任栽培用の品種
基本的にはどのような品種も、放任栽培はできます。
けれど、栽培状況によって、トラブルが起きやすい場合があります。
放任栽培の中でも、地這い状態となる場合、
水やりや降雨で実に水分が触れることで、裂果が多くなることがあります。
雨除けをして裂果を防ぐこともできますが、
水やりをするとどうしても裂果しやすくなるので、
もとから裂果に強い品種を選ぶのがポイントです。
また、トマトの中には、放任栽培を推奨している品種もあります。
それが「マンマミーア」という品種です。
店頭で販売されている苗のタグには「そのまんまdeミニトマト」、
という名前がついていることもあります。
容器栽培を目的とした品種ですが、多少のわき芽かきをすることで、
地植えもできる品種とのことです。
さらに、シシリアンルージュ、ロッソナポリタン、
サンマルツァーノリゼルバも、放任栽培(ソバージュ栽培)の向いています。
こういった放任栽培に向いた品種を選ぶことも、
放任栽培を成功させるポイントとなります。
*詳しいトマトの栽培方法は、下記をご覧ください。
・トマト プランターの育て方
・トマト 地植えの育て方
・ミニトマト プランターの育て方
・ミニトマト 地植えの育て方
・ミニトマト わき芽かき